日本における健康保険制度の問題
2015年12月に報道されたニュースとして「診療報酬引き下げ」」ということがありました。
これは普段あまり病院に行かない人や医療関連の仕事をされていない人にとってはあまり気にならない問題かもしれませんが、実は病院医療に携わる人にとってはまさに死活問題にもなるような大きなことです。
以前より国の医療福祉制度が逼迫しているということは広く伝えられており、なんとかして予算を削減しようと政治的な動きがされてきました。
その中で出されたのがこの診療報酬の引き下げということになりますが、この2016年度からの引き下げは全体をマイナスに改訂するという8年ぶりのものであり、現在の医療の現場の状況から鑑みて限りなく悪い方法であったと言ってもよいものです。
現在医療や福祉の現場で人手不足が起こっていますが、これは既に診療報酬では十分に職員の給与を支払うこととができず待遇を改善することができないばかりかどんどん悪化しているということが主な原因です。
日本の医療制度は世界各国と異なり国が医療費の大部分を負担するというかなり手厚いものとなっています。
しかし一方でそれだからこそ医療費が増大すると国庫にも大打撃を与えることにもなってしまい、病院にかかっても十分な治療を受けることができないなどの問題が出るようになっています。
参考>>あなたの医療と診療報酬
実費診療にシフトすることで経営改善
そんな中で医療機関の動きとして起こりつつあるのが、実費診療へのシフトです。
私達は病気や怪我をしたときには保険証を持って治療を受けることでそこにかかった分の医療費の大部分を負担してもらうことができるようになっています。
しかし全ての症状にそうした健康保険が適用されるわけではなく、審美歯科治療や整形外科のような治療ではない行為や、診療報酬の対象とされていない高度医療などでは実費で医療費を支払わないといけないこととなっています。
実費治療は患者さん側に大きな金銭的負担をかけるものですが、逆に考えれば診療報酬の点数を基準にした治療方法がとられるわけではないため、患者側で受けたい治療を自由に選ぶことができるというメリットがあります。
病院や歯科医院ではそうした実費診療を多く取り入れることで診療報酬の計算に左右されない治療に専念することができるとともに、安定的な病院経営をしていくことができます。
特に個人で医院を経営されている人にとっては、どういった方向にビジネスをシフトしていくかということが大きなポイントになってきます。
介護の現場ではかなり進んでいます
病院よりもさらに実費での利用が進んでいるのが介護業界です。
介護の現場においても40歳以上の人を対象に徴収される介護保険制度が導入されていますが、実際にはそうした介護保険制度の利用には面倒な認定制度があったり、思うようにサービスを利用できなかったりという問題があります。
そこで介護保険制度に認定されるまで重度に介護が必要というわけではないという高齢者に対して、より快適なサービスを利用することができる実費での介護施設が多く民間で運営されるようになりました。
高齢者向けのバリアフリー住宅や共同生活ができるシェアハウスなど、基本的に実費で入居をしつつ保険制度にはないような細かいサービスを受けることができるものとなっています。
今後は欧米式の国の保険制度ではなく民間の保険を利用したり、実費を前提とした施設利用が進んでいくことになるかもしれません。